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「将来テニスコーチになりたいんですが、何を勉強しておけば良いですか?」
というご質問を、何名かの学生の方から頂きました。
私自身、アルバイトから専属コーチ、を数年やらせて頂いたので、今考えていることを改めて書いてみたいと思います。
もし現役コーチの方でご覧になったら・・・心外だと思われることもあるでしょう。
私の気持ちを、正直に書きます。
テニスが上手い人は、コーチに向いている?
1.時代が変わって来た、テニスコーチは?
結論から言えば、これから先のテニスコーチは相当厳しい。
厳しい条件、が求められると思います。
テニスやスポーツ産業だけでなく、これからはAI技術が進歩して「自分でしか出来ないこと」を仕事に出来るかどうか、が鍵になる。
テニススクールでも、全面にカメラを搭載して数値を客観的に計測、それを生徒はBluetoothイヤホンで受信し、AIコーチがアドバイスをくれる、なんてことになるかも知れません。
私は、近い将来こうなる可能性が非常に高いと思っています。
そして、そのAIコーチは世界全国とつながっているので、ちょっとした成功事例、失敗事例はリアルタイムで共有される。
指導の精度は高まるばかり、人間コーチは用無しになってしまうかも知れない。
時代が変わって来たこと、を敏感に感じることが出来ない人は厳しいでしょう。
もちろん、テニスコーチに限った話では無いんですが。
2.テニスが上手い人、だけでは足りない
私は、もちろん基本技術としては大事だと思います。
ですが、自分がプレーする技術と人を導く技術、はまた違いますよね。
元々ボール感覚も優れていて、運動神経が良いような人は、苦労をしていない、出来ない。
だから、出来ない人の気持ちはどうやったって分からないんです。
だから、初心者クラスの指導は難しい。
教わる側とのギャップが生じてしまうし、それに本人も気付かないんですよね。
「なんでこんな簡単なこと、出来ないんだよ」と、どこかで思ってしまう。
3.自分で苦労してきた人、記録してきた人は向いている
テニスはそこまで上手くないけど、自己流で頑張ってきた人。
自分で外の世界を知ろうと動いて吸収し、人に伝えたいという想いがある人。
こういう人は、テニスコーチという仕事は向いていると思います。
それから、自分が苦労してきたこと、上手くいかなかったことを記録している人ですね。
テニスノート、ブログ、何でも良いと思います。
極論、最高のコーチって初心者から上級者に、そのテニススクールで成長出来た人。
生徒さんがコーチになる、のが私は一番良い道だと思うんですよね。
教わって苦労して、部活やサークルではない中で上達出来たこと。
社会人になって成し遂げる、これは本当に凄いことだと思います。
4.テニスを通じて、どんな価値を生み出せるのか
AIコーチに勝つ為に、何が必要なのか。
私は、テニスを教えること、を通じてどんな価値が生み出せるのか、だと思います。
テニスコーチって、テニスを教えるだけじゃないんですよね。
生徒さんだって、ただテニスが上手くなりたい訳じゃない。
テニスを通じて、どういう人生を歩んでいきたいのか。
これからは、人生100年が当たり前のような時代になるでしょう。
その中で、テニスはどうその人の人生に寄与出来るのか。
ここを真剣に考えて、価値を形に出来る人。
それこそ、これからの時代に必要なテニスコーチ、だと私は思います。
10代、20代の頃の私が今の文章を読んでも、「?」という感じでしょう。
好きなテニスなんだから、それを仕事に出来たら最高じゃん!
だけだと、そう遠くない将来にラケットを置くことになるでしょう。
甘くない、だけど・・・やっぱりテニスコーチは、良い仕事ですよ。
だからこそ、安易に選んでしまう前に、立ち止まって考えて欲しいんです。
アナタ自身、テニスを通じてどんな価値を生み出すことが出来るでしょうか?
テニスが上手い人は、コーチに向いている? とっても共感を覚えました。というか、やっとこういう意見の方に巡り会えてホッとしました。実はちょっとした経緯からいま中学高校部活の外部コーチをやっておりまして、保護者からは「なんで何の実績もない輩がコーチヅラしてるんだ」的に見られ(ているようで)、どう説明したものかと、心苦しい日々を過ごしておりました。子供時分に、運動万能な父親からずっと教わっていた時に、「何んでこんなこともできないんだ」と言われ続け、上達できず、結局自分で独学で練習し会得していきました。結果、できるようになってみると、コツはここで、自分だったらこう教えるのにな、と気づいたことがたくさんあったのです。また塾講師・家庭教師・教育実習・カメラ教室・講演会など、人に教えることが自分の得意分野だと自信あってこのコーチ役に携わっておりますが、スポーツの習い事はなぜか「選手としてそれが上手な人」を絶対的に崇拝する傾向にあり、それで失敗している部活や学校を多くみてきました。運動優秀な子は伸びるのですが、初めてやる子や、レギュラーになれない子は、伸びないし、楽しくないので、やめるしかないわけです。これは教育の材料でなく、学校の活動ではなくなっているわけです。もっと技術指導者の技量を体系的に認めてあげる仕組みが必要かと思います。テニス指導員の資格もクラブの推薦に縛るのではなく、もっとオープンに、客観的なシステム的なものになったらと思う次第です。
非常に貴重なご意見、また長文ありがとう御座います!
私自身、指導者の資格、特に今のテニスに関する資格は形骸化されていて、ほとんど意味が無いもの、になっているような気がします。
仰る通り、日本では「本人が達成していない目標」を教えることは、認めない風潮にありますよね。
親御さんから見れば、上手く出来ないのはコーチのせい。
こういう指導に悩み苦しんでいる方の為にも、体系的な仕組み作りは本当に大切ですね。
非常に考えさせられるご意見、ありがとう御座いました。