その他

「試合に出続けながら苦しもう」スペインテニス界のトーナメント事情

スペインのバルセロナで練習していた時、月に3大会ほどのペースで大会に出場していた。

いや、正確に言うと、月3大会出場させられていた。

毎週毎週、どこかで大会が開かれていたんだけど、コーチが勝手に申し込んでしまうので、休みが明けた月曜の朝、送迎バスがアカデミーに着いたと同時に「トモ、お前は今から試合だ!」とコーチの車に乗り換えさせられる。

「試合に出続けながら苦しもう」スペインテニス界のトーナメント事情

 


 

「聞いてないよ!!」なんて言っても、

「お前はテニス選手だろ?試合に出ないと!!」

と請け合ってはくれない。

初めてスペインに行った24歳の頃は、そうやって大会に出場して、しかも殆ど一回戦負けで終わっていた

試合に出場するとアカデミーで行われるハードな練習はしなくて済むんだけど、知らない土地に行って敗北する空しさを考えると、慣れたアカデミーでゼーゼーハーハー苦しみながらも練習している方がずっと気が楽だった。

だから毎週月曜の朝に駐車場でコーチに「トーモー!!!」と、呼ばれるのが本当に辛かった。

金銭的にも余裕はなかったので、エントリー代を払うのも苦痛だった。

日本の大会よりかはずっと安くて良心的な金額ではあったが、それが一回戦敗北となると1試合分の金額となるのである

「断る方法は無いかな」って思ったりした。

今のレベルじゃ勝てない。

もっと上達してから出るべきなのでは・・・と思いながらも、結局は出続けた。

出続けるうちによく試合会場で見掛ける選手が増えて来た。

同じ相手に2回も3回も当たったこともある。

そうなるとまた会場で会うと「元気?」って挨拶し合う。

ほぼ毎週やっているその大会はモンティーツアーというトーナメントなんだけど、そのディレクターの太っちょのおじさんとも仲良くなって「トモ!!」って元気に呼びかけてくれた。

日本人選手の中ではモンティーツアーだからモンちゃんって呼んでいたんだけど、彼がその大会を手際良く運営している姿は観ていてなんだか心地よかった。

相変わらず勝てないまま半年が過ぎたけど、その頃には大会に出るべきかどうか・・・ってことは疑問に思わず、なんで俺は勝てないんだってことと、純粋に向き合うことが出来ていた。

半年過ぎてから徐々に一つ二つ勝てるようになった。

更に勝ち上がるとシード選手との対戦もあり、そうするとATPポイントを持った選手と戦ったりするし、それをきっかけに仲良くなれたりもする

試合会場に行っても、同じアカデミーの選手やコーチ以外の人達ともコミュニケーションを取ることが出来るようになった。

27歳の時、2年ぶりにまたスペインでトレーニングを行った。

同じアカデミーに所属したんだけど、今度は日本人選手がなんと

10人以上も在籍。

そんな彼らと一緒に過ごしたんだけど、2年経ったその時も変わらず月曜の朝は多くの選手達が勝手に試合をエントリーされて、大会へ駆り出されていた。

「僕は試合には出場したくない!」

中にはそうやってコーチに直談判している日本人の選手もいたんだけど、なるほど、そう言っている選手は勝てずに苦しんでいて尚かつ金銭的にも厳しそうな選手だった。
 



 

その選手は、まだ大会会場よりアカデミーの方が自分の居場所と思っているんだろうね

エントリー代はたった1試合分の料金って思ってるんだろうね。

練習場所は単なる練習の場所であって、テニス選手は大会会場にこそ、自分の居場所と感じなければならない。

エントリー代だってケチるんじゃない!!!

なんて、その選手を観て思ったんだけど、結局俺も半年以上はそう思えるまで掛かったわけだからエラそうなことは言えない。

もちろんコーチ達も「試合に出場したくないと言うのなら、このアカデミーで練習をさせるわけにもいかないよ」と言って、その選手にピシャリと言い放っていた。

やっぱり試合に出続けることだよ、それだけは間違いない。

皆、試合に出続けながら苦しもう。

 

■引用元
元プロテニスプレイヤー 高西ともからのメッセージ

ピックアップ記事

  1. 夏の男性の日焼け止めは、「ギャツビー パーフェクトUV スプレー」が便利
  2. 水で濡らして絞って振れば、何度でも冷たくなるタオルが使える
  3. 大事なテニスウェアを汚したくないなら、シャープの超音波ウォッシャーを持ち歩こう
  4. 暑い夏のテニスの試合に備えて、瞬間冷却パックの準備は欠かせない
  5. 真夏のテニスの試合に必要な、熱中症対策のマストアイテム5つ

関連記事

  1. その他

    刺激に勝る、妙薬は無し

    本日は、東京都練馬区のタウンテニス大泉学園さんにお邪魔させていただき…

  2. テニス コントロール

    その他

    テニスの試合で、「作戦は相手に知られてOK!」むしろ後半は、それを逆手に取っていくのが常套手段です

    スポーツにおいて、「自分の作戦はなるべく相手に悟られないように・・・」…

  3. テニス メンタル

    その他

    テニスの試合で勝てる選手は、「上手くいっているうちから作戦を変える」勇気を持って実行している

    スポーツの試合には、「作戦勝ち」という言葉があるように、事前の準備は大…

  4. テニス 部活

    その他

    「試合に出る人、出ない人が分れてしまうテニス部」は工夫次第で変えていける

    中学、高校、大学とたくさんテニスの大会はあるけど、公式戦って意外と少な…

  5. テニス 試合

    その他

    「知らないうちに、やってるかも・・・」テニスの試合会場で見かける、マナー違反な行為5つ

    テニスの試合会場では、いつもの練習とは違う独特の雰囲気で包まれています…

  6. テニス ストローク

    その他

    アナタのテニスは、「たくさんの人に支えられている」ということだけは、覚えておいて下さい

    皆さん、毎日テニス、頑張れていますか?週一回、月一回、または年…

特集記事

  1. テニス ストローク

    サーブ

    試合で1発目のファーストサーブ、で全ては決まる
  2. テニス ストローク

    ストローク

    片手バックハンドを極めたいなら、パッシングショットは避けて通れない
  3. テニス メンタル

    メンタル

    テニス部の後輩に負けて悔しいなら、その後輩の為にもっと強くなろう
  4. テニス メンタル

    シングルス

    シングルスの試合でも、実際は「クロスコート半面」での勝負が多い
  5. テニス 感覚

    その他

    「2015年 インターハイ テニス会場」に行って良かった感じたこと5つ
PAGE TOP